『田園の詩』NO.75「お祭りの保存継承」(1997.12.23)


 どこの町や村でも、小学校は地域の中心部に位置しています。そして、この小学校を
起点にして、地域(村)は東西南北に分かれており、何事につけても各地区でまとまって
行動することになります。

 地域対抗のスポーツ大会はもとより、消防団や老人会なども、この単位で結成されて
います。

 多少の差異はあっても、田舎はどこも同じような形態を持っていると思います。ですか
ら、小さな村の中でも、各地区間の結束や縄張りみたいなものは結構強いものがあります。

 それを培ってきたのは≪お宮≫(神社)だったと私は思います。当村にも各地区にそれ
ぞれ中心的なお宮があり、地区民はほとんど全員(わが家は違いますが)そのお宮の
氏子なのです。春夏秋冬のお宮の行事には、氏子(つまりは地区民)総出で当たります。


      
     田舎の神社の秋祭りで、よく見かけるお神輿行列です。  (08.10.18写)


 ところで、今、この各地のお宮のお祭りの運営に問題が出てきました。≪お神輿≫を担
ぐことや、≪楽≫(太鼓踊り)の奉納が困難になりつつあるのです。

 ことに、わが町(大分県山香町)を代表する県指定無形民俗文化財の≪楽≫の後継者
が少なくなってきました。

 原因は過疎化による人手不足でしす。そこで、学校全体で≪楽≫の保存継承に取り組ん
でもらったらという声があがりました。 しかし、宗教的行事であること、時間的余裕が
ないことなどの理由で無理とのことです。

 さらに、他地区の親から「うちの子はそのお宮の氏子ではない」といわれ同意が取
れません。地域の文化であるお祭りの保存継承に向けて、どんな手を打てばいいの
でしょうか。単に人口が増えれば解決するのでしょうか。

 農村に於けるお宮のお祭りは、五穀豊穣を願い、また、感謝する意味を持っています。
今年は、柿やミカンやリンゴなどが豊作です。しかし、「豊作を喜べぬ」という記事を
目にし、声を聞きます。これでは、お祭りをなんのためにするのか意味を失います。

 農業(人口)の復活こそが、お祭りの保存継承に繋がる第一歩と思います。
                         (住職・筆工)

                   【田園の詩NO.】 【トップページ】